免許・資格は多ければ多いほど求人も多く、職の選択肢が広がりますよね。クレーンを操作する資格の中には国家試験の受験が必要なものもあり、需要や給料に影響を与える資格と言えるでしょう。ここでは、クレーン運転士とはどのような資格で何かできるのか、取得方法までお伝えします。
3種類あるクレーン操作の資格
クレーンの操作資格は3種類あります。免許、技能講習、特別教育です。そのうち、免許は大きくわけて2種類(クレーン・デリック運転士と移動式クレーン運転士)があります。
免許
免許試験は、安全衛生技術センター(全国7ヶ所)にて定期的に実施されています。
クレーン・デリック運転士
動力を利用して荷物(5t以上)を吊り上げ、水平に運搬するための機械装置。例えば、天井クレーンや橋形クレーンなどの運転が可能で、ビル建設や製鐵所などあらゆる現場で活躍することができます。クレーン・デリック運転士免許には、合計3種類の選択肢(限定無しの免許、クレーン限定免許、床上運転式クレーン限定免許)があります。
移動式クレーン運転士
動力を利用して荷物(5t以上)を吊り上げ、水平に運搬するための機械装置。原動機を内蔵し、あらゆる位置に荷物を移動させることが可能。例えば、積載形トラッククレーンやラフテーレーンクレーンなどの運転が可能で、建築や土木工事の現場などで活躍することができます。
技能講習
技能講習は、社団法人日本クレーン協会の各支部において定期的に実施されています。登録教習機関(都道府県労働局長から登録された)が行う学科および実技の講習となります。
免許の種類と操作できるクレーン一覧(平成28年1月現在)
操作できるクレーン | 跨線テルハ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
資格の種類 | 5t以上 | 5t未満 | デリックの運転 | |||
クレーン 無線操作式 |
床上 運転式 |
床上 操作式 |
||||
クレーン・デリック運転士免許 (限定なし) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
クレーン・デリック運転士免許 (床上運転式クレーン限定) |
○ | ○ | ○ | ○ | ||
床上操作式クレーン運転技能講習 | ○ | ○ | ○ | |||
クレーンの運転の業務特別教育 | ○ | ○ |
資格の種類 | 移動式クレーン | 玉掛け | ||
---|---|---|---|---|
5t以上 | 1t以上5t未満 | 1t未満 | 1t未満 | |
移動式クレーン運転士免許 | ○ | ○ | ○ | ○ |
小型移動式クレーン運転技能講習 | ○ | ○ | ○ | |
移動式クレーン運転の業務の特別教育 | ○ | ○ |
技能講習で操作できるクレーン一覧
免許等の種類(吊り上げ荷重) | 操作できるクレーン | |||
---|---|---|---|---|
床上操作式 クレーン (5t以上) |
移動式 クレーン (1t以上5t未満) |
玉掛け(1t以上) | ||
技能講習 | 床上操作式クレーン | ○ | ○ | |
小型移動式クレーン | ○ | ○ | ||
玉掛け | ○ |
免許等の種類 (吊り上げ荷重) |
操作できるクレーン | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
クレーン (5t未満) |
跨線テルハ (5t以上) |
移動式クレーン (1t未満) |
デリック (5t未満) |
玉掛け (1t未満) | ||
特別教育 | クレーンの運転の業務特別教育 | ○ | ○ | |||
移動式クレーンの運転の業務特別教育 | ○ | |||||
デリック | ○ | |||||
玉掛け | ○ |
クレーン資格の種類と具体例
(「クレーン・デリック運転士(クレーン限定)」の免許で操作できるクレーン)
吊り上げ荷重が5t以上の床上操作式クレーン、床上運転式クレーン、無線操作式クレーンなどを操作できます。
クレーンの種類
天井クレーンやジブクレーン、橋形クレーン、ケーブルクレーン、アンローダ、テルハなどを操作できます。
(「床上運転式限定クレーン」の免許で操作できるクレーン)
吊り上げ荷重が5t以上の床上運転式クレーンを操作できます。
クレーンの種類
床上でペンダントスイッチにより運転。尚且つ運転者がクレーンの走行と一緒に移動する方式のものを操作できます。
(「移動式クレーン運転士」の免許で操作できるクレーン)
吊り上げ荷重が5t以上の移動式クレーンを操作できます。
クレーンの種類
ホイールクレーン(同じ運転席で走行とクレーン操作を行う)およびトラッククレーン(運転室と操作室が別々)を操作できます。
(「デリック運転士」の免許で操作できるクレーン)
吊り上げ荷重が5t以上のデリックを操作できます。
クレーンの種類
デリックには、荷の水平運搬が可能なもの・不可能なものがあります。
(「揚貨装置運転士」の免許で操作できるクレーン)
吊り上げ荷重5t以上の揚貨装置を操作できます。
クレーンの種類
船舶に取り付けられたデリックやクレーン設備で積み荷の上げ下ろしが可能です。
上記で挙げたように、クレーンの免許と一言で言ってもさまざまな種類があります。つまり、それは業務の幅が広いというようにも捉えることができ、複数のクレーン免許を取得することで対応業務を増やすことは就職にも有利になります。建設業、製造業の需要の波に左右される業務ですが、さまざまなクレーンを操作できるように免許を取得しておくに越したことはないでしょう。
床上運転式と床上操作式の違い
床上運転式とは
横行操作した際に荷とともに移動せずに運転することが可能です(操作スイッチのケーブルがガーダの一端に固定されてつり下げられた定位置方式、またはガーダと平行に張られたメッセンジャワイヤなどからつり下げられたメッセンジャー方式のクレーンによる)。クレーン等安全規則において、「運転する者が走行とともに移動する方式のクレーン」と規定されています。
床上操作式とは
その名の通り、床上で運転できる形式のクレーンで、走行や横行の操作の際、運転者は荷の移動とともに移動します。クレーン等安全規則において、「運転する者が荷の移動とともに移動する方式のクレーン」と規定されています。
クレーンとデリックの違い
クレーンとデリックの違いとは何なのでしょうか。それは本体の部分に動力装置を備えているか否かという違いです。クレーンの場合は単体で荷のつり上げができますが、デリックの場合は設置されている巻き上げ機によって荷のつり上げが行われます。言い換えると、デリックとはブーム(腕のように伸びているメインの棒状部分)の操作とは別に原動機があり、ワイヤロープを操作するものとなります。
玉掛けの資格は必要か
玉掛けの資格は必要なのでしょうか。基本的にクレーンの運転と玉掛けの作業とは別物です(そういう意味でも別の資格が必要となる)。玉掛けとは、フックに荷物を掛けたり外したりする作業のことを指し示します。こうした作業は現場で必ず必要となる作業であるため、玉掛けの資格はクレーンのある現場では必須の資格とされています。
資格取得の条件
性別、学歴不問。特に受験資格が必要になることはありません。本人確認証明書があれば受験できます。
ただし、ただし、危険有害業務の就業は満18歳以上になります。
資格を取得する方法
クレーンの資格を就職前に自分で取るか?就職して会社で取るか?と悩む方も多いと思います。就職前に自分で取得しておいた方が確かに就職には有利になります。その場合、教習所に通うことになりますが、問題は学科試験で落ちてしまう人が多いということです(教習所に来る方は、安全技術センターで学科試験が必要とは思っていない傾向もあります)。そのため、教習所に行く前に学科試験を受けておくことをおすすめします。学科試験合格後に教習所で技能を受ける場合、テキスト代が不要となる教習所も中にはあります。また、入社後に免許を取得する場合は、取得費用を会社が負担してくれる場合もあるなどメリットもあります。
受験場所
安全衛生技術センター
費用
学科試験
各免許試験とも 8,800円
実技試験(学科試験合格者・学科試験免除者)
クレーン・デリック運転士 14,000円
移動式クレーン運転士 14,000円
<取得の流れ>
受験を希望する安全衛生技術センターに受験申請書を提出
↓
受験票の受け取り(郵送)
↓
試験
・学科試験:各項目40%以上の得点、合計60%以上の得点で合格となります。
希望した安全衛生技術センターで受験します。
・実技試験:減点の合計が40点以下であること
(1年間有効)
↓
試験結果の通知
科目内容
クレーン・デリック運転士(限定なし)
1.試験科目・試験時間
種 類 | 試 験 科 目 | 出題数(配点) | 試 験 時 間 |
---|---|---|---|
学科 | ・クレーン及びデリックに関する知識 | 10問(30点) | 13:30~16:00 2時間30分 1科目免除者は 13:30~15:30 2時間 2科目免除者は 13:30~14:45 1時間15分 |
・関係法令 | 10問(20点) | ||
・原動機及び電気に関する知識 | 10問(30点) | ||
・クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 10問(20点) | ||
実技 | クレーンの運転 | 午前又は午後に分けて受験票に記載されます。 | |
クレーンの運転のための合図 |
(注)学科試験の範囲には、クレーン関係知識、デリック関係知識、クレーン関係法令及びデリック関係法令すべてが含まれます。 ※出張試験における試験開始時刻は、別途会場ごとに定められます。
クレーン・デリック運転士(クレーン限定)
1.試験科目・試験時間
種 類 | 試 験 科 目 | 出題数(配点) | 試 験 時 間 |
---|---|---|---|
学科 | ・クレーン及びデリックに関する知識 | 10問(30点) | 13:30~16:00 2時間30分
1科目免除者は |
・関係法令 | 10問(20点) | ||
・原動機及び電気に関する知識 | 10問(30点) | ||
・クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 10問(20点) | ||
実技 | クレーンの運転 | 午前又は午後に分けて受験票に記載されます。 | |
クレーンの運転のための合図 |
(注)学科試験の範囲からデリック関係知識及びデリック関係法令は除かれます。 ※出張試験における試験開始時刻は、別途会場ごとに定められます。
クレーン・デリック運転士(床上運転式クレーン限定)
1.試験科目・試験時間
種 類 | 試 験 科 目 | 出題数(配点) | 試 験 時 間 |
---|---|---|---|
学科 | ・クレーン及びデリックに関する知識 | 10問(30点) | 13:30~16:00 2時間30分 1科目免除者は 13:30~15:30 2時間 |
・関係法令 | 10問(20点) | ||
・原動機及び電気に関する知識 | 10問(30点) | ||
・クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 10問(20点) | ||
実技 | クレーンの運転 | 午前又は午後に分けて受験票に記載されます。 | |
クレーンの運転のための合図 |
(注)学科試験の範囲からデリック関係知識及びデリック関係法令は除かれます。また、実技試験は床上運転式クレーンを用いて行われます。 ※出張試験における試験開始時刻は、別途会場ごとに定められます。
移動式クレーン運転士
1.試験科目・試験時間
種 類 | 試 験 科 目 | 出題数(配点) | 試 験 時 間 |
---|---|---|---|
学科 | ・移動式クレーンに関する知識 | 10問(30点) | 13:30~16:00 2時間30分 科目免除者は 13:30~15:30 2時間 |
・原動機及び電気に関する知識 | 10問(30点) | ||
・関係法令 | 10問(20点) | ||
・移動式クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 | 10問(20点) | ||
実技 | 移動式クレーンの運転 | 午前又は午後に分けて受験票に記載されます。 | |
移動式クレーンの運転のための合図 |
※出張試験における試験開始時刻は、別途会場ごとに定められます。
技能講習
各技能講習は企業、教習所、専門学校など、都道府県労働局長登録教習機関で受講できます。
床上操作式クレーン運転技能試験技能講習
費用
各教習所により異なりますが、3~4万円前後が目安となります。
科目内容
(学科)
床上操作式クレーンに関する知識
関係法令
力学に関する知識
原動機及び電気に関する知識
(実技)
床上操作式クレーンの運転のための合図
床上操作式クレーンの運転
小型移動式クレーン運転技能講習
費用
各教習所により異なりますが、3~4万円前後が目安となります。
科目内容
(学科)
小型移動式クレーンに関する知識
原動機および電気に関する知識
力学に関する知識
関係法令
(実技)
小型移動式クレーンの運転のための合図
小型移動式クレーンの運転
玉掛け技能講習
費用
各教習所により異なりますが、2万円前後が目安となります。
科目内容
(学科)
クレーン等に関する知識
クレーン等の玉掛けの方法
力学に関する知識
関係法令
(実技)
クレーン等の運転のための合図
クレーン等の玉掛け
(実技)
特別教育
クレーン運転の業務の特別教育
費用
各教習所により異なりますが、1~2万円が目安となります。
科目内容
(学科)
クレーンに関する知識
原動機及び電気に関する知識
関係法令
力学に関する知識
(実技)
実技教習
移動式クレーン運転の業務の特別教育
費用
各教習所により異なりますが、1~2万円が目安となります。
科目内容
(学科)
移動式クレーンに関する知識
原動機及び電気に関する知識
関係法令
力学に関する知識
(実技)
移動式クレーンの運転のための合図
移動式クレーンの運転
玉掛けの業務の特別教育
費用
各教習所により異なりますが、1~2万円が目安となります。
科目内容
(学科)
クレーン等に関する知識
クレーン等の玉掛けの方法
力学に関する知識
関係法令
(実技)
クレーン等の運転のための合図
クレーン等の玉掛け(実技)
各料金は目安で保証するものではありません。
まとめ
一口にクレーンの運転資格と言っても、さまざまな種類があります。免許、技能講習、特別教育のそれぞれの特性を事前に把握しておきましょう。免許に関しても大きく分けて、クレーン・デリック運転士と移動式クレーン運転士の2つがあるということも覚えておきましょう。また、クレーンの資格取得のタイミングですが、就職を有利にするためにも、就職前に取得しておくことをおすすめします。その場合には教習所に通うことになりますが、学科試験で不合格となってしまうケースが多く、学科試験は教習所に行く前に受けておくべきでしょう。クレーンの免許は多岐に渡り、それらを取得することで現場での活躍シーンも増えます。今後も需要がある資格と言えるでしょう。